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高卒就職問題~本当に変えるべきは古臭い常識なのです~(2)

  • transactorlab
  • May 17, 2022
  • 4 min read



高卒就職問題研究のtransactorlabです。高卒就職問題改善のために研究と提言を行っております。


進む人口減少 国家の危機と高卒賃金

 少子化による人口減少が急速に進んでおります。早急に若年労働者の所得を大幅に引き上げないと日本は大変なことになります。高卒賃金の上昇が危機脱出の重要なカギだと私は思うのですが、これがなかなか進みません。

 高卒求人市場は需要が急騰しているにもかかわらず待遇条件の上昇はとても緩やかだという「おかしな状態」が続いています。稀少価値が増す一方の若い働き手たちがその価値に応じたまっとうな対価を得る、日本はそのような国に変わらなければ未来はない・・・ホントにそう思います。


 さて、高卒就職問題と一口に申しますがその裾野は非常に広く複雑ですので、いったん整理したいと思います。


高卒就職問題とは

(1)高卒就職者の早期離職率が高いこと

 高卒就職問題といえばまずはこれです。早期離職とは新規学卒者が就職後3年以内に退職することを言います。高等学校就職問題検討会議(厚労省・高等学校・経済団体3者の代表で構成される。高卒就職のルールの申し合わせ事項はここで決定される)において長年の課題となっています。


高卒就職者の3年以内離職率の推移 昭和62年度以降の統計

各年次の下段が1年以内、中段が2年目、上段が3年目での離職率

35%~45%程度が3年以内に辞めていることが分かる



 いわゆるミスマッチが早期離職の要因としてクローズアップされ、その対策として「一人一社制の見直し」の議論が起こり、「複数応募制の導入」が始まりました。しかし、その導入のさせ方は全国一律ではなく「地域の実情に合わせて導入を・・・」との呼びかけの形。初回応募から複数応募を可とした自治体は秋田と沖縄だけ、後に加わった和歌山の3県のみとどまっています。


 そもそも3割4割が3年以内に辞めるというのは別に高卒に限ったことではなく、短大卒も大卒もたいして変わらないのですよ。下のPDFには中卒から大卒の早期離職率推移が一枚にまとまっています。



(2)複数応募制が導入されたが広がらず、早期離職率抑制策としての効果が見られないこと


 複数応募制が初めて導入されたのがいつからなのかは調査中です。平成26年度の全国統一様式求人票に「複数応募の可否」は入っていましたが、それをどう扱うかは各都道府県ごとのローカルルールに任されていますので、明示は難しいでしょう。秋田や沖縄以外の多くの都道府県は「1回落ちて2回目からの応募から可」だとか「10月半ば以降」とか「11月から」の応募から可とする形を採用しました。いずれにしても導入後3年以上が経過しましたが、効果がどれぐらいあったのかは不明です。上のグラフの見ても・・・ほとんど変わりませんね。複数応募がどれぐらいあったのかについても不明です。きちんとした統計は探してもなかなか見つかりません。おそらく極めて少ないでしょう。

 複数応募制の広がらない、効果が薄いことについての私の考えはこちらに詳しく書きました。カンタンに言うと「現実にはムリ」、「問題はそこじゃない」だからです。加えて、求人倍率高止まりが続いており、「とくに必要ではない」ようになってきていますので、ある意味自然な流れではなのではないでしょうか。


上記(1)と(2)は現在のところ一般的に「問題」として認識されている事柄です。


見えてきた問題

 そして以下は私自身が(1)と(2)の問題について調査研究する過程で見えてきた問題点です。これらを高卒就職問題と関連ありと気づいている人はそれほど多くないでしょう。しかし、読んでいただければご理解いただけるものと思います。


(3)求人倍率高騰に対して求人待遇上昇が極めて緩やかだ

(4)高卒就職市場には待遇相場を表す客観的な情報が不足している

(5)高卒初任給と地域別最低賃金が互いに足を引っ張り合っている

(6)人口減少と若年層の所得が伸びないことは国家経済の破綻を招く

(7)やはり情報不足が一番の壁

(8)教員にもある古い常識「高卒だとこれぐらいじゃないの」


 次回はこれら「見えてきた問題」について書きたいと思います。


 
 
 

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